なぜ薄くて小さいコンパクト財布が普及してきたのか

ここ数年、薄くて小さいコンパクト財布を店頭やインターネットで見かける機会が増えました。弊社が薄い財布に携わり始めたのは2009年ごろで、当時はキャッシュレス化を特に意識していたわけではありません。ただ、2016年以降に実際にキャッシュレス決済が広がり、さらにクラウドファンディングをきっかけに多くのメーカーが薄い財布の分野に参入したことで、コンパクト財布という選択肢が一気に知られるようになったと感じています。今回は、なぜこうした財布が普及してきたのかを、弊社なりの見方でまとめてみます。

まず前提として、薄い財布には、もともと持つ人を引きつける魅力があると思っています。特に男性は、財布がポケットの中で厚みを持たず、すっきり収まることに本能的な良さを感じる方が多いようです。スーツやジャケットのシルエットが崩れにくく、後ろポケットに入れても座ったときに気になりにくいといった、実用面の利点もあります。ここに、機能を絞ってすっきり持ちたいという持ち物全体の傾向が重なり、薄い財布は以前から一定の支持を得てきました。

そこに大きく作用したのがキャッシュレス化です。経済産業省の発表によると、日本のキャッシュレス決済比率は2016年ごろは2割前後でしたが、その後少しずつ上がり、2024年には4割を超えています。2016年にはiPhoneがおサイフケータイ機能に対応して、日本でもApple Payが始まりました。2018年ごろからはQRコード決済が広まり、2019年の消費税率引き上げ時にはポイント還元制度も行われました。こうして、持ち歩く現金の量が以前より減った方が増えました。現金が少なければ財布に大きな容量は要りません。財布を小さく薄くまとめることが、無理のない選択になってきたと言えます。

もうひとつの要因が、クラウドファンディングです。2010年代の半ば以降、クラウドファンディングを使って新しい財布を発表する事業者が増えました。小さな規模のメーカーでも、アイデアがあれば製品を世に出せるようになり、薄さや小ささを特徴にした財布が数多く紹介されるようになりました。選択肢が増えたことで、コンパクト財布という分野そのものが、多くの人の目に触れるようになったと思います。

ただ、キャッシュレス化が進んで現金が減ったので、容量の少ない財布を作った、というだけでは、あまり工夫があるとは言えないのではないかと思っています。単に小さくするだけなら、入るものが減るだけです。薄く作るには、カードや紙幣をどう重ねるか、縫い代や生地の厚みをどう抑えるか、といった構造の工夫が要ります。SOLAHANPUは、キャッシュレスも意識はしますが、現金が多い状況も含めて、どちらの場合でも構造的に財布が薄くなるように研鑽を積んできました。現金が多い日でも、少ない日でも、薄さを保てることを目指しています。

また、日本の現金文化は、そう簡単には無くならないと考えています。文化面や政治面など、さまざまな要素が絡み合っているため、結局は現金が残り続けるだろうと思います。実際、欧米やアジアの各国では、日本よりキャッシュレス化が徹底している例が少なくありません。国ごとに事情は違いますが、日本は比較的、現金が使われ続けている国だと言えます。日本では硬貨の種類が多く、1円玉から500円玉までが日常的に使われることも、財布から小銭を無くしにくい理由のひとつかもしれません。

仮に現金が今より減ったとしても、財布そのものが不要になるとは考えにくいです。現金以外にも、身分証、保険証、クレジットカード、銀行のキャッシュカード、交通系ICカード、ポイントカードなど、持ち歩くカード類はまだ多くあります。スマートフォンにまとめられるものも増えていますが、すべてがそうなるにはまだ時間がかかりそうです。

日常で外出するとき、最も多く、肌身離さず持ち歩く道具は、やはり財布ではないでしょうか。かばんを持たない日はあっても、財布は持って出るという方は多いと思います。だからこそ、財布は薄く、小さく、それでいて必要なものがきちんと入ることが大切です。キャッシュレス化が進んでも、現金が残り続けても、コンパクトで使いやすい財布への需要は、これからも続いていくと考えています。

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